「ってわけで、今夜は佳乃子んち泊まるから」
『佳乃子ちゃんちに泊まるの?えらい急な話じゃないの』
「だ〜か〜ら〜!佳乃子今すっっっっごい落ち込んじゃっててさ。1人にできないからさ」
『まったく・・・しょうがないわねぇ』
「お母さんありがとッ!じゃあ、明日はお昼過ぎに帰るからね」





初めてお母さんに嘘までついて。
今夜は・・・

大好きなてっちゃんと

お泊り







「・・・電話、大丈夫か?」

部屋の中からひょっこり顔を出して。
夕日が差し込むベランダにいる私を、見つめた。

「うん。大丈夫!」
「そっか・・・」

嘘までついた私のこと。
てっちゃんはあんまり良く思ってないみたい。
言葉にすら出さないけど、雰囲気でわかる。





今日は一日。
てっちゃんと海辺を散歩してみたり、ショッピングしてみたり。

『ちょっと遠出』
のつもりで来たから荷物はちょこっとしかないんだけど。

最近、全然てっちゃんに逢えなくて。
淋しくて。
何かがプッツリとはじけちゃった。

『今夜は帰りたくない』

海辺で、私からてっちゃんに告げた。


無理言って、ホテルを探してくれて。
少し落ち着いてから。
お母さんに『今夜は帰らない』って電話をいれた。






携帯をマナーモードにしてから、バッグにしまって。
ソファでくつろぎながら、
海を眺めているてっちゃんの隣へ座る。

てっちゃんは何も言わない。
だけど、大きな手で私の顔を包んで。
その胸の中へと引き寄せてくれる。

ダイレクトに心臓の音が聞こえてくるから。
それだけで『抱きしめられてるんだ』って実感する。

嬉しくなる反面。
同じ重さの『切なさ』も感じる。

この瞬間はこんなにも近くにいてくれるけど。
明日からは、遠くの地に行ってしまう。

淋しさが少し和らいだとしても。
また同じことの繰り返し。

そんなことを考えていたら。
急に涙が溢れてきた。


「・・・・どうして泣くの?」
「え?」

涙の粒が、てっちゃんのTシャツにポタポタ落ちていた。


「ん〜・・・・嬉しかったり悲しかったり・・・なんかよくわかんないや」
「嬉しかったり悲しかったり・・・・俺と同じだな」
「そうなの?」
「そりゃ生きてるんだもん。それくらいはあるだろ?」
「じゃあ、てっちゃんの『嬉しいこと』って何?」
「上手い飯食えてライブできる!・・・ことかな」

私の顔はてっちゃんの胸の位置にあるから。
てっちゃんの表情はわからないけど、
それでも、本当に嬉しい事柄なんだろうね。
声が弾んでる。

「じゃあ・・・てっちゃんの『悲しいこと』って・・・何?」
「・・・言わせたい?」
「・・・ぇ?」
「俺の口から言わせたい?」

その問いかけに顔を上げた。

逆光で。
顔はよく見えないけど。
切なそうな顔をしているのはわかった。

「やっぱり・・・俺から言えば良かった」
「・・・何を?」
「『今夜は帰さない』って・・・俺から言いたかった」

今夜は・・・
帰さない・・・?

に、そんな言葉を言わせた・・・俺がいけないんだよ」
「いやだッ!そんなこと言われたら私・・・」
「違うって。勘違いすんなよ?ただ俺が先に言いたかったの!」
「え?え?・・・なんかよくわかんない・・・」
「ったく〜。鈍感だなぁ」

唇が触れるか触れないか・・・
そんなキスをひとつくれた後。

『帰りたくない・・・なんて好きな女の口から言われたら。
  やっぱり男はくやしいもんなんだよ。
    だから今夜はたっぷり・・・2人の時間楽しもうぜ?』

なんて耳元で言われたら。

『帰りたくない』って、気持ち伝えて良かったなって思っちゃうじゃん。

end

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あとがき(04/06/15)

長野企画第四弾!
ぽちさんからのリクで『秘密のデート』でした。

グッズ売り場の前で『ここにいます〜』なんてメールをもらっても
さっぱりぽちさんの居場所がわからず・・・(>_<)
最終的にはぽちさんから声をかけてもらい逢うことができましたッ。
本当に一瞬だけしか逢う事ができなくて・・・とっても残念でしたわね〜。

裏話。
てっちゃん続きでネタに困った私。
相方に『秘密のデートと言ったら何?』と質問したら
「そりゃ、内緒でお泊りだろ〜」とネタ提供してもらい、やっと書き上げることができました。

そんなわけで、ぽちさん!
見つけて下さってありがとうございました♪
末永くお付き合いよろしくお願いしますッ。

Moon glowsの管理人、佳乃子様からの頂き物です〜♪
ゴスサイトさん巡りをしていて、「号泣in長野に参加します」って言うTOPの一言を見て、思わず書きこみをさせて頂きました。
↑にもありますが、「会場に着きましたよ〜♪」などとメールをやりとりしながら、(何処だろ〜、ドキドキ)と思いながら、
やっとの思いで発見!したんです。見つけられて良かった〜☆
ホントに、一瞬だったので、今度は是非ゆっくりお話しましょう♪


モドル ススム